診療一口メモ
受動喫煙防止対策について
喫煙者は、がん・心臓病・脳卒中・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・肺炎・糖尿病・歯周病等の罹患率や死亡率が高くなります。また副流煙には主流煙の100倍の有害物質が含まれており、周囲の人への受動喫煙により、がん・心臓病・脳卒中・乳幼児突然死症候群などのリスクが高くなります。受動喫煙防止のためには喫煙者数の減少を図るとともにマナーの徹底が求められます。しかし喫煙者の多くはニコチン依存症の状態であり、残念ながらマナーを考えて理性的に行動できる人ばかりではありません。そこで法律による規制が必要となります。
世界的にはほとんどの国が受動喫煙防止法を定めており、世界186か国中、公衆の集まる場所(①医療施設②大学以外の学校③大学④行政機関⑤事務所⑥飲食店⑦バー⑧公共交通機関)すべてに屋内全面禁煙義務の法律があるのは55か国になります。これまで日本には受動喫煙を禁止する罰則付き法規制がなく、受動喫煙防止対策に関するWHOの国別ランク付けでは最低レベルでした。厚生労働省は喫煙の健康影響に関する啓発・普及、禁煙支援マニュアルの策定・改訂、禁煙補助薬の保険適応、たばこ税増税などに取り組むとともに、平成30年に健康増進法を改正し受動喫煙対策を強化しています。2020年4月の改正健康増進法では①~④の場所が原則屋内禁煙となり、違反すると罰則が課されることになりました。さらに東京都はオリンピック開催を視野に、より厳しい受動喫煙防止条例を施行しました。それでも小規模な飲食店や屋外さらには家庭内への対策はまだほとんどとられていない状況です。「望まない受動喫煙」をなくすために、今後も官民一体で更なる受動喫煙防止対策を推進することが必要です。
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岡山市医師会“診療一口メモ”係